国民投票から3年が経った今
2016年6月の国民投票からはや3年、英国のブレグジット(EUからの離脱)が全然進みませんね。
FTSE100(英国の株価指数)をCFDで保有している身としては、早く決着がつかないかなとやきもきしています。
ただ、ふと思ったのですが、このブレグジットの騒動は、もはやFTSE100の価格への影響としては年々小さくなってるのではなかろうか?
そこで、改めてブレグジットをめぐるこれまでの経緯をおさらいし、FTSE100の値動きとの相関も調べてみました。
ブレグジットの(本来の)スケジュール
2016年6月の国民投票で英国のブレグジットの方針が決定しました。
ただ、それだけで「はい離脱します」とはいきません。
その後おおまかに以下の手順を踏んで離脱に至る予定でした。
2. 英国とEUが離脱の方法やスケジュールについて合意
3. 上記合意について英国議会で承認を得る
4. 離脱完了
EU Delegation to Japanのサイトからの引用ですが、具体的なスケジュールは以下のとおり:
ところがスケジュールは大幅に狂い、2019年3月の離脱期限を過ぎてしまいました。
しかし英国はいまだにEUに加盟したまま。
いったいどうなっているのでしょう?
ブレグジットに関する年表
この離脱遅延理由を知るために、ブレグジッをめぐるおもな出来事を時系列で並べてみました。
国民投票でブレグジットが決まったのが2016年ですが、それ以前からの経過も参考になるので挙げています。
2013年
1月
キャメロン首相(保守党)がEU加盟の是非を問うため、国民投票を実施すると公約。
ただし、2015年の総選挙で保守党が勝利した場合という条件付き。
*当時の英国は、リーマンショック/欧州債務危機からの回復途上で、国民にEUへの不満が増大していた。保守党内でも同様の不満があり、半ば突き上げられるように決断。ただ、キャメロン氏はまさかEU離脱派が勝利するとは想像していなかった(キャメロン氏は残留派)。「国民投票して気がすむならそれでいいんじゃね?」ぐらいにしか思っていたとかないとか。
2015年
5月
総選挙で保守党の勝利。国民投票の実施へと向かう。
*この後、シリア難民の流入や、パリでの同時多発テロなど、移民問題がクローズアップされ、世論はEU離脱派に有利な展開へと傾く。残留派にとって暗雲立ち込める状況。
2016年
6月23日
EU加盟の是非を問う国民投票を実施。
結果、離脱派が勝利。
7月13日
キャメロン首相が退任。後任にメイ首相が選出。
2017年
3月29日
EU条約50条の発動(英国がEUに対して離脱を通知)
2年以内の離脱を目指して交渉開始
6月8日
総選挙を実施。
メイ首相は政治基盤を強化する目的は達することができず。
6月22日
EUと第1回のブレグジット交渉
11月9日
英国がEU離脱の日時を確定(2019年3月29日23時とする)
12月8日
英国とEU間で離脱条件に関して大筋で合意
*大筋といっても全体という意味ではなく、入口の部分って感じですね。
2018年
3月1日
2月28日にEUが離脱協定の草案を英国に提示したが、英国は受け入れを拒否。
*その後協議の進展のないまま時間だけが経過
7月8日
英国の離脱担当大臣デイビッド・デイビスが辞任
7月9日
英国の外務大臣ボリス・ジョンソンが辞任
*あの髪型が変な元ロンドン市長のおっさんですね。でもじつはオックスフォード出身の高学歴。メイ首相のEUに対する態度が生ぬるいのが気に入らなかった模様。
11月14日
英国は離脱協定の草案を承認。
翌日、離脱協定の内容に反発した複数の閣僚が辞任
*どんどんメイ首相の味方が消えていく。。
2019年
1月15日
英国議会で離脱協定案の採決(1回目)
→ダブルスコアで否決
3月12日
英国議会で離脱協定案の採決(2回目)
→否決
3月20日
英国はEUに離脱期限を6月30日に延ばすよう要請(本来の離脱日は3月29日)
→3回目の採決で承認されれば5月22日まで延期、否決されれば4月12日まで延期、という条件が認められる。
3月29日
英国議会で離脱協定案の採決(3回目)
→否決
4月5日
英国は再びEUに対して離脱期限を6月30日に延ばすよう要請
→再延長は認められ、離脱日は10月31日に延期となった。
6月7日
メイ首相が退任
*頑張ってましたけど、ここまで結果を残せなければ仕方ないかも。離脱協定案3回否決というのは酷すぎですしね。
6月23日
保守党党首選でボリス・ジョンソンが党首に。
そして英国首相に就任。
なにがなんでも10月31日までに離脱すると息巻いているそうです。
FTSE100との関係
主要な出来事を並べただけでも相当な長さになってしまいました。
まとめると、英国が都合の良い離脱を望んでいて、話がなかなか進まないということですね。
とくにアイルランドとの国境問題が相当難問なようです。
さて、ここでFTSE100の価格推移との関連を見てみます。
重要イベントをさらに絞り、9個にしてみました。
期間は2013〜2019年(現在)の6年半です。
①キャメロン首相が国民投票の実施を公約
②総選挙で保守党が勝利。国民投票の実施が決定
③国民投票で離脱派が勝利
④EU条約50条の発動(2年後を離脱日とする)
⑤ボリス・ジョンソン外相辞任
⑥英国は離脱協定の草案を承認(不満分子多数)
⑦離脱協定案否決(1回目)
⑧離脱協定案否決(2、3回目)
⑨ボリス・ジョンソン首相就任
このグラフを見ると、②と③の間で値動きが激しく、下落基調ですね。
国民投票の実施が決まり、実際に投票してみると離脱が選択されたという、激動の時期です。
今後起こることに対する不安がこの値動きに現れていると思います。
その後ブレグジットに向けてゴタゴタが続くわけですが、それが価格に悪影響を与えているとは言えません。
むしろ右肩上がりで回復基調なんですよね。
⑤〜⑦で値下がりしていますが、この頃になってブレグジットの難しさが浮き彫りになり、2018年8月には「合意なき離脱」というフレーズが登場しました。市場が離脱に伴う痛みに気付き始めた時期かもしれません。
ただし、この時期はクリスマス・ショックを含む、世界的な株価調整の時期と重なるため、ブレグジットの影響だけとは認めにくいです。
とくに2019年1月以降は、離脱協定案が3連続で否決されたにもかかわらず、価格は上昇しています。
これは世界的なクリスマス・ショックからの回復に乗っかったものでしょう。
FTSE100の今後は?
ブレグジットのゴタゴタをまとめると、こんな感じでしょうか?
2. ブレグジットすることになった!さあどうしよう?
3. とりあえずやっつけでEUと合意したぞい!
4. 議会で3回連続で否決
5. ボリス・ジョンソン復活
国民投票から3年、それ以前に国民投票の話が出てから6年半、英国国民はブレグジットと付き合っているんですね。そしてなにひとつ進展していない。
もはや日常風景となっているので、FTSE100への影響は軽微なものでは?と感じています。
また、FTSE100を構成する企業はグローバル企業が多く、それは米国の影響を大きく受けるということ。
米国寄りのボリス・ジョンソンが首相に就任したことはそれほど悪い選択ではないかもしれません。
日本のメディアでは面白いので失言癖ばかりクローズアップされていますが、失言のないシーンではかなりできる漢です。ただ、かなりの目立ちたがり屋って感じなだけです。
というわけで、FTSE100の価格に影響を与えるのは、もはやブレグジットではなく、米国を中心としたグローバルな景気動向ということになるでしょう。
FTSE100を構成する企業はブレグジットだけで深刻な影響を受けるような脆弱さはありません。
たとえばTOP30には以下の企業がみられます。
(disfold.comから引用)
冷静に判断して、これらの企業が受けるのは、ブレグジットよりグローバルな景気動向、例えば米中貿易戦争などでしょう。ブレグジットが火種になってEUの、そして世界的な経済的破壊を引き起こすというシナリオもなくはないですが、米中に比べれば英国の影響力は小さなものです。
ということで、FTSE100の価格については、短・中期の動向はブレグジットの影響は受けるでしょうが、長期的あるいは激しい値動きに関してはその他の外部要因による影響の方がはるかに大きくなると考えています。
もはやブレグジット関連のイベントでFTSE100の価格が大きく動く時期は過ぎてしまっていると思っています。
個人的にはキャッシュに若干の余裕があるので、為替の動きが鈍い今、追加で購入するのも悪くないかなと考えています。